バルセロナ・チェアと猫

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『ディテールに神は宿る』というのは、建築家ミース・ファン・デル・ローエ氏の名言である。
バルセロナに滞在した時、昼に空いた時間で行かなくてはとタクシーに乗り、ミースの記念碑的作品へと向かった。その建物は、カタルーニャ美術館の敷地の斜面にある。元来、1929年のバルセロナ万国博覧会のドイツ館として建てられたパビリオンで、当時の建物は会期の終了と共に撤去されてしまったけれども、1986年、ミース財団によって同じ場所に復元されたそうだ。
僕は、NYのシーグラムビル、シカゴのアパートメント等、スケールが大きなものに足を運んだことはあるけれど、小さなスケールの建築物ははじめてだった。しかもここは、有名なバルセロナチェアの起源となる建築作品である。
建築家がデザインした家具は、その対象となる建築空間にフィットするように設計される。それでも名作と呼ばれるようになる家具は、ユニバーサルなデザインとして世界に普及していく。そういう意味でも、ディテールのなかに真髄のあるミースの家具の現場を知りたかった。そこには完璧な調和があるだろうと、期待していた。
その建築は、ミニマリズム建築の極地という程、素晴らしいものだった。僕は、バルセロナの陽光のなかに佇む建築物に崇高さを感じた。設計自体の構成美の素晴らしさもさることながら、石とガラスが織り成す建築物そのものが、質感として素晴らしいものだった。
現代のミニマリズム建築の旗手であるジョン・ポーソン氏の作品には、このミースの建築物を翻案したものがある。それでもこのテクスチャの素晴らしさは翻案できなかった。
ミニマルであることと、リッチであることのバランスに対する解答とは、ここにあるのだろうと思う。ゴージャスなミニマリズムという地平があって、そこにはローコストでは達成できない境地がある。
現在、その建物に住んでいるのは、一匹の猫である。 
<tokyotaro>

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