藤子不二雄さんに小学生のころファンレターを出すと、キャラクターが勢ぞろいしたはがきを送ってくれた。その優しさにとても感動してしまい、大人になったらああいう漫画を書きたいなと思った。ひとりでキャラクターを想像し、ノートにいくつもの話を書いた。1970年代の話である。
それから十年して、僕は世田谷にある某私立大学に入学した。明るく、楽しく。80年代のキャンパスライフの理想がある場所だった。そこで同じ学部に藤子不二雄Bさんの娘がいると知った。友達が彼女をよく知っていたので、子供の頃の想いがあって、「ぜひお父さんを会わせて欲しい」と頼もうと思ったが、妙に恥ずかしくて切り出せなかった。子供でもなく、漫画家志望でもない大学生が会って何をしていいかわからなかった。
しばらくして、彼女のお父さんは亡くなった。恥ずかしいなどと思って切り出せなかった自分を後悔した。とても残念だったし、結局僕は友達から彼女を紹介してもらうこともなかった。
今度ドラえもんのアニメの声優の大山さんが辞めるという。僕のドラえもんは紙であってアニメではないけれど、そういうことにノスタルジーを感じてしまう人たちの気持ちはわかる。「ドラえもん」という漫画の世界も、世界のどこかで現実としての静かな死と繋がっているのだろうと。
ドラえもんの娘。
日記・コラム・つぶやき
コメント